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2008年7月22日の朝日新聞の天声人語です。
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しばらく前の小欄で、夏目漱石が国からの博士号の授与を断った話を書いた。生前の漱石が博士の称号をどう思っていたのかは、夫人の回想録「漱石の思い出」にくわしい▼いわく「博士なんていうものは、やってることはいくらか知ってるでもあろうが、そのほかのことは一切知りませんという甚だ不名誉な肩書きだ」。漱石一流の皮肉だろうが、昔はそんな人が多かったのかも知れない。▼その漱石も一目置くような博士が先日、少紙「ひと」欄に載った。亀高素吉さんは、82歳で薬学の博士号を受けた。神戸製鉄所の元社長で、文系出身の素人ながら、引退後に10年かけて学んだというから驚く▼石油危機や鉄冷えをくぐり抜けた企業人は、「そのほか」の広い知識もお持ちだろう。前妻を病気で亡くした。今の奥さんも病に倒れ、薬の副作用に悩まされた。もっと良い薬はつくれないかという思いが、志の根っこになったそうだ。▼博士とまではいかなくても「生涯教育」に意欲を持つ人が増えている。内閣府の先ごろの調べでは、特に60代に目立っている。退職期を迎えた「団塊の世代」が熱心なためらしい。学ぶのは楽しいし、知識や教養のもたらす滋味は、人生を深めてもくれるだろう▼「わが人生という無二の書物を、どこまでも読み続けていこう」と言ったのは誰だったのか。「読む」とは味わうという意味らしい。つまり人生という物語を自らつづって自ら味わう。一線を退いた「高齢学徒」が、漱石先生も一目置くような物語を、続々とつづる世になれば面白い。

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by gyntgynt | 2008-07-24 17:45

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